ラーメン賞味法Vol.2(『ラーメンの文化経済学』より)
[ラーメン賞味法Vol.1より続き]
③カウンター越しにオヤジの麺さばきや、タレ、スープの調合の仕方をじっと見つめる。
(無駄な動きをしていないか、ラーメンに愛情を持っているかを観察する。この間、間違っても水のガフ飲みなどしない。オヤジは背中でこちらを値踏みしている)
④(『タンポポ』の、ラーメン歴40年の老人(大友柳太郎)の講釈より)
「最初はまずラーメンをよく見ます。丼の全容をラーメンの湯気を吸いこみながら、しみじみ鑑賞してください。‥‥スープの表面にキラキラと浮かぶ無数の油の玉、油にぬれて光るシナチク、早くも黒々と湿り始めた海苔、浮き沈みしている輪切りのネギたち。そして何よりも、これらの具の主役でありながらひっそりと控え目にその身を沈めている三枚の焼き豚‥‥」
《丸優ラーメン高城店(大分市高城南町)》
「ではまずハシの先でですね、ラーメンの表面を慣らすというか、撫でるというか、そういう動作をしてください。ラーメンに対する愛情の表現です。つぎに、ハシの先を焼き豚の方に向けてください。この段階ではさわるだけです。‥‥ハシの先で焼き豚をいとおしむようにつつき、おもむろにつまみ上げ、丼右上方の位置に沈ませ加減に安置するのです。‥‥そして、これが大切なところですが、この時心の中で詫びるがごとくつぶやいてほしいのです。──あとでね、と」
《らーめん飛天(大分市下郡)》
「さて、それではいよいよ麺から食べ始めます。‥‥あ、この時ですね、麺をすすりつつも目はあくまでもしっかりと右上方の焼き豚にそそいでおいてください。これも愛情のこもった視線を‥‥」
《名代長浜ラーメン(大分市弁天)》
(やがて老人はシナチクを一本口中に投じてしばし味わい、それをのみ込むとこんどは麺を一口。‥‥そしてその麺がまだ口中にあるうちにまたシナチクを一本口中に投じた。ここで初めて老人はスープをすすった。たてつづけに合計三回。‥‥それからおもむろに体を起こしホーッとため息をついた。‥‥つぎに老人は意を決したかのごとく一枚目の焼き豚をつまみ上げ丼の内側にトーントーンと軽くたたきつけ、スープを切ってから口に運び、うっとりとした表情で味わうのであった‥‥)
《らーめん ふらり(別府市)》
(修行すれば無意識にそうなる)
⑥七~八分以内に食べ終わる。
(時間がたてば麺は伸び、スープの温度が下がって生臭さが鼻につくようになる)
最後に、残ったスープを全部飲みほす。
[ラーメン賞味法Vol.3に続く]
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